ドリーム

ドリーム

1960年代、まだ黒人差別が強い時代においてNASAの一員として初の有人宇宙飛行(マーキュリー計画)のために奮闘した黒人女性たちの物語です。

まずもって、NASAの宇宙開発においてこうした黒人女性たちが活躍していたということがアメリカ本国でもほとんど知られていなかったということに驚きます。

とにかく、演出が丁寧だと思いました。台詞だけでなく、画面の構図や役者の所作、劇伴の音楽など、いろいろな所で前に出てきたものが活かされる作りになっています。

それが単なる伏線の回収ではなく、物語の推進力を増し、感動を呼び起こす装置として見事に機能していて、上手いと唸ってしまうシーンがいくつもありました。

白眉は、やはりケビン・コスナー演じる技術責任者がキャサリンに「ある物」を手渡すシーン。

ここは冒頭のシーンと重ね合わさって涙が止まりませんでした。

この映画に出てくる人たちは、悪意があって彼女らを差別しているのではないと思います。

それが当たり前で、ずっとそうやってきたからなのでしょう。

全ては「前例がない」という理由ではねつけられるのです。

しかし前例がない有人宇宙飛行をやろうとしているのに、前例に囚われていてどうするのかということです。

クライマックスに向け、NASAの中にそうした垣根が取り払われていくのは心が熱くなります。これが、事実に基づく物語だというのだから素晴らしいと思います。

この映画は様々なハードルや困難を乗り越えて何かを達成する人たちの物語です。

そのハードルとは主人公たちにとっては人種差別や偏見ですが、人類にとっては宇宙へ行くために重力を乗り越えるということでもあるでしょう。

主人公たちが頭脳と能力で周囲を認めさせると同時に、人間が科学によって宇宙へ行くというカタルシスが並行して描かれていきます。

差別はいけない、というテーマはこの映画にとって重要ですが、同時に人間賛歌でもあったと思います。